臨床研究として、ACE遺伝子、AGT遺伝子およびβ3アドレナリン受容体遺伝子多型解析をおこないニューロパシックペイン患者におけるレニンアンジオテンシン(RA)系と交感神経系の遺伝的多様性の特徴を検討した。ACE遺伝子は490bp(II型)、490および190bp(ID型)、190bp(DD型)に分類し、AGT遺伝子多型はエクソン2に存在する遺伝子多型であり(M235T、T174M)、エクソン2の遺伝子増幅をおこなった。この結果ACE遺伝子多型のなかでDD型遺伝子は約1/3の患者で観察された。AGT遺伝子多型とβ3アドレナリン受容体遺伝子多型性は、ニューロパシック患者と健常者では差はなかった。 動物実験として、(1)自然高血圧発症ラット(SHR)において絞扼性神経損傷モデルにて、不完全神経損傷モデルを作成し、中枢内にレニン・アンジオテンシン系遮断目的で、アンジオテンシンII、1型受容体のmRNAのアンチセンスODN50μgを手術部位と反対側の室傍核に投与した。この結果、RA系を遮断された自然高血圧発症ラットでは、平均血圧が約30mmHg低下した。またHeat allodyniaは有意に認められたが、Mechanical allodyniaは有意差がでなかった。以上より中枢内RA系の遮断では、降圧効果が生じたが、末梢での神経因性疼痛発現には殆ど影響を示さなかった。(2)SHRに対して髄腔内にナロキソン0.mg/kgを50μLに調整して投与した結果、機械刺激による後趾の逃避反応を起こす50%疼痛閾値のg数が約49%まで低下したが、収縮期血圧はナロキソンのくも膜下腔投与で変化しなかった。SHRでは中枢内AS-ODN投与によるRA系の遮断は血圧低下を生じさせるが、CCI(慢性神経因性疼痛モデル)でのnociceptionには影響せず、一方、脊髄におけるRA系の遮断はNociceptionに影響した。
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