麻酔科学関連領域での医事紛争について検討した。1949年から2001年までに法律雑誌等に報告された刑事訴訟症例のうち、麻酔関連領域と薬剤使用に関する症例94例の判決について検討した。検討内容としては、年代別、有責の有無とその量刑、被告人が複数の場合はその責任分担の程度等を検討した。その結果、1.民事訴訟と比べ近年刑事訴訟は増加していることはなかった。2.有責となった症例の割合は96%と高かった。3.他の医療職と比べ医師が禁錮に科せられる割合は高かった。4.過失失致死罪と比較して過失傷害罪の量刑が軽いとは限らなかった。以上より、医師の量刑が他の職種と比較して重かった。その根拠としては、医師が医療行為の最終施行者であること、監督責任者としての責任、責任分担の不明確さなどにより判断されたと考えた。責任の分担が確立している場合では、それに基づき量刑が科せられていた。このことより、責任分担の明確化、システム化の構築が重要であり、チーム医療としてのシステム化、分担化の確立が事故再発防止の観点からも重要と考えた。薬剤使用に関しては、添付文書が医療水準を反映しているとみなされており、医師にとってますます重要となると考えた。次に、判決文におけるカルテ記載の言及に関して検討した。これは、麻酔科医として麻酔記録を含めたカルテ記載のあり方を、法的重要度の観点から検討できるからである。検討の結果の一部としては、記載のない測定や医療行為はなされていないとみなされる可能性が高かった。このことに関連した記述なり対策が麻酔関連図書にどう反映しているか一部検討したところ、記載に関しては正確な事実のみの記載、経時的記載、整合性が重要であるとされていた。
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