麻酔科学関連領域での医事紛争について検討した。まず、ペインクリニック領域での医事紛争について検討した。救急領域の医事紛争と同様に、司法によって患者の訴えは一部認容されていた。神経ブロックのより厳格な適応、学会ガイドラインの遵守、合併症への対策などが重要と思われた。また、刑事訴訟判例のうち、誤認に関する判例を検討した。誤認に関しては、ヒューマンエラーと考えた場合、二重のチェック体制が重要と考えられる。その場合、より多くの複数の関与は、かえってその責任の不明確さを伴うことになりやすいため、より少ない人数でのチェックシステムの構築が、その責任分担にもなり現実的と思われた。この日本での麻酔科学関連領域での医事紛争レベルを、国際レベルと比較するために国際学会で発表した。次に、麻酔記録を含めたカルテ記載について検討した。カルテでの記載は、裁判上の証拠となり、信用性を伴う記載にすべき、と思われた。記載がない医療行為は実行されていないと解釈されることがあり、追記に関しても、日時の記入、その理由の付記などを考慮すべきと思われた。他の記載との整合性も重要と思われた。こうした記載に関しては、日本の麻酔関連図書よりも米国の麻酔関連図書の方が優れていた。医事紛争に対しては、より具体的な記述で、再発を防ぐように記述が充実していた。これは、医事紛争が日本より多く、一般の麻酔科医が遭遇する機会が多いからと思われた。また、記載に関しても、より正確な事実の記載が重要とされていた。
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