研究課題
基盤研究(C)
麻酔科学領域での医事紛争の判決を集計し検討した。主に平成14年度までに結審した判決を法律雑誌などより集め、刑事訴訟症例のうち、麻酔関連領域と薬剤使用に関する94症例を検討した。その結果、民事訴訟と比べ増加はしていなかった。有責率は高く、医師への量刑は他職種より重たかった。過失致死罪と比べて過失傷害罪の量刑が軽いとは限らなかった。薬剤添付文書は医療水準を反映しているとみなされていた。医療者側としては、責任分担の明確化、チェック体制のシステム化への構築が再発防止からも重要で、添付文書の改訂には、国際的な整合性も必要である。救急、蘇生領域の35症例、痺痛管理領域症例での検討では、処置、診断の不備が司法で一部認容されていた。医療者側としては、救急受け入れ体制の構築、心肺蘇生法の定着、神経ブロックの適応の遵守が必要と思われた。次に、麻酔記録を含めたカルテ記載について同様に検討した。カルテの記載は裁判上の証拠となるので、正確な事実のみの経時的な記載、他の記載事項との整合性が重要で、記載のない測定や医療行為は実行されていないと解釈されることがある。追記も、日時の記入、その理由の付記などより考慮されるべきと思われた。この記載に関しても、医事紛争に言及する内容に関しても、米国の麻酔関連図書の方が日本のそれよりも優れており、より具体的で再発防止でも優れていた。これは日本より医事紛争が多く遭遇する頻度が高いためその必要性が高いからと思われ、今後は日本でもそうした記載の充実が望まれる。最近の訴訟症例での判決での検討では、麻酔専門知識への言及、麻酔専門医への訴訟が目立ち、麻酔科医としての専門性の研磨が重要と思われた。今後の研究課題としては、患者用説明文、カルテ記載のあり方を含めて判決から検討することが必要と思われた。
すべて 2005 2004 2002
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