研究概要 |
近年、脳神経外科領域では良好な手術視野を得るため、高輝度・高倍率の手術用顕微鏡を使用するようになった。以前はハロゲンランプを光源に用いていたが、最近の手術用顕微鏡はキセノンランプを使用している。キセノンランプはその光特性として365nmの紫外領域に強いピークを持ち、神経細胞障害を起こす可能性がある。紫外線は水に吸収されることが知られており、脳表面の水分は神経細胞保護効果を示す可能性がある。臨床上は、脳表に生理食塩水を滴下し脳の乾燥を防ぐ事が多く、神経細胞保護効果が期待できる。そこで、本年度は生理食塩水の紫外線照射に対する神経細胞保護効果を検討した。脳表に生理食塩水の層(0.5mm,1.0mm,2.0mm)を形成し、cranial window内に4.4m watts/cm2の紫外線を照射した。照射24時間後に潅流固定を施行し、ヘマトキシリンエオジン染色によりcranial window部位の障害神経細胞数をカウントした。生理食塩水の層0.5mm,1.0mm,2.0mmに対する24時間後の細胞障害度はそれぞれ42 23%、21 18%、10 8%で、生理食塩水による明らかな保護効果がみとめられた。生理食塩水による紫外線の吸収率を測定したところ、ほとんど吸収されていなかった。このことより、生理食塩水による直接の保護効果が存在するか、もしくは生理食塩水により紫外線がscatteringし脳表に対する紫外線刺入角度が減少したことが関与していると考えられた。
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