研究概要 |
近年、脳神経外科領域では良好な手術視野を得るため、高輝度・高倍率の手術用顕微鏡を使用するようになった。以前はハロゲンランプを光源に用いていたが、最近の手術用顕微鏡はキセノンランプを使用している。キセノンランプは紫外領域に強いスペクトルを持ち、神経細胞障害を起こす可能性がある。そこで、ロジスティック回帰分析により、神経細胞障害を引き起こす紫外線強度をラットを用いて求めた。 30%の神経細胞障害を引き起こす紫外線強度は3.7mwatts/cm2 50%の神経細胞障害を引き起こす紫外線強度は5.4mwatts/cm2 70%の神経細胞障害を引き起こす紫外線強度は7.1mwatts/cm2 であった。 現在、臨床で使用されている手術用顕微鏡の紫外線照射強度を測定したところ、最も多いもので0.320mwatts/cm2であり、急性の組織障害を生じる可能性は低いと考えられた。 次に、脳表に散布した生理食塩水の紫外線照射に対する神経細胞保護効果を検討した。生理食塩水の層0.5mm,1.0mm,2.0mmに対する24時間後の細胞障害度はそれぞれ42 23%、21 18%、10 8%で、生理食塩水による明らかな保護効果がみとめられた。生理食塩水による紫外線の吸収率を測定したところ、ほとんど吸収されていなかった。このことより、生理食塩水による直接の保護効果が存在するか、もしくは生理食塩水により紫外線がscatteringし脳表に対する紫外線刺入角度が減少したことが関与していると考えられた。
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