生の魚介類摂取により感染するVibrio vulnificusは、わが国では有明海沿岸で多発し、極めて予後の悪い疾患である。本疾患が有明海沿岸地域に多発する原因を調査するため、平成14年度は有明海海水および魚介類から検出された環境由来株の病原性に関する検討をおこなった。 a.子学的病原性に関する検討 【方法】当初の計画通り、有明海海水及び魚介類から採取した種のvibrio vulnificus12菌株、および患者由来株(病原株)を用いた。各菌株を溶菌後、フェノールでDNAを抽出したのち、パルスフィールド電気泳動により、環境由来株と病原株の遺伝子情報を比較した。 1)患者の感染性体液より培養された21菌株病原株の間で遺伝子学的な相同性の有無について検討した。 2)病原株と環境株(百数十株)との間で遺伝子学的な相同性の有無について検討した。 【結果】 1)21種の病原株間で遺伝子学的相同性は認められなかった。 2)環境株12種について病原株との間の遺伝子学的相同性は認められなかった。残りの百株余の環境株についても現在検討をおこなっているところである。 【考察】 これまでの結果では、21名の患者由来株はすべて異なる病原株であり、異なる感染源によって発病したことが明らかになった。しかし、現時点では、病原株と一致する環境株を特定できていないことから、各患者の感染経路の特定には至っていない。これまで得られた検査結果の一部は、平成14年度日本麻酔学会、および日本集中治療医学会総会において発表した。
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