ビブリオ・バルニフィカスに対する有効な治療法がない現在、ハイリスク患者を同定し適切な生活指導を行うことは70%の患者が死亡する本症の予防対策上、きわめて重要である。 今年度は、その具体的方策として、血清抗体価測定によるハイリスク患者のスクリーニングの可能性を検討した。 【方法】 抗体価測定システムの開発には、micro-IFアッセイ法を用いた。発症直後の本症患者2名と健常人21名について、ビブリオ・バルニフィカス菌10株に対する血清抗体価を測定した。 【結果】 健常人21名中、8名において、標準株10株すべてにおいて有意な抗体価の上昇を認めた。発症早期の患者血清中の本菌に対する抗体価はすべての菌株において低値を示した。 本疾患の完治症例における抗体価の推移は、ビブリオ・バルニフィカス菌の2株に病勢の推移と一致した変動が認められた。 【考察】 ビブリオ・バルニフィカス標準株を用い抗体価測定システムを開発した。本検査法は、特異性や感度につき更に検討する必要があるが、抗体価上昇が特異的であるとすれば、本菌に対する抗体を既に有している健常者も存在することが示唆される。さらに、2種の菌株において患者の抗体価と病勢の推移が一致したことから、今回の研究により開発した抗体価が臨床応用できる可能性が高くなった。次年度は、この抗体価測定が、ハイリスク患者のスクリーニング検査として、有用か否かにつきさらに多くの症例で検討する予定である。
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