わが国でのVibrio vulnificus感染症患者は、有明海沿岸で多発するためC型肝炎対策と並んで地域医療の重要な課題である。昨年度までに本感染症への免疫能を知る指標として、Vibrio Vulnificus菌に対する血清抗体価測定システムを開発し、健常人の抗体価の有無について調査を行い、今年度はこの実用化に向けて患者血清中の抗体価と病勢との推移について、これまで5症例で検討をおこなった。 【方法】 Vibrio vulnificus標準株10株をもとに、患者の承諾を得てmicro-IFアッセイ法による血清抗体価を、4名の患者で測定した。 【結果】 死亡した2症例では、発病時、血清抗体価が40倍以下と低値を示した。約1ヶ月経過後の測定では、標準株のうちの2株に対する抗体価が80倍以上に増加した。一方、発病したものの比較的軽症例2例では、上記の菌株に対する血清抗体価が80倍以上あり、1ヶ月後には共にさらに抗体価の上昇を認め、特定の菌株に対する抗体価の推移は、本感染症の病勢の推移と一致した。 【考察】 今回使用した10株の標準株の内、病勢と一致した2株については、本感染症に対する免疫能を知る上で臨床応用できる可能性がさらに高くなった。次年度もさらに症例を重ねる予定である。 さらに、最終年度である次年度は、この2株と他の菌株との相違、有明海環境株と患者から同定された病原株につて16RsDNAにより、遺伝子学的な菌の分類を行い、結果をまとめて投稿する予定である。
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