我々はこれまでに、本感染症が佐賀県など有明海沿岸の北部九州四県に多発していることを明らかにし、本邦での実態について臨床疫学的視点から更に詳細な調査を行ってきた。さらに、本感染症に対するハイリスク患者のスクリーニングやワクチン開発の可能性に繋がる本細菌に対する血清抗体価測定法を開発した。 最終年度では、本血清抗体価測定システムの臨床的有用性を検討するとともに激症型Vibrio vulnificus感染症に対するワクチン開発の可能性検証試験を行った。 結果: 1)Vibrio vulnificus患者血清を用い、計日的な血清抗体価の推移を検討した。この結果、発症一週間以降に血清抗体価の上昇を認めた。 2)Vibrio vulnificus患者のうち死亡例と軽快例について、発症一週間以内の抗体価の比較を行った。その結果死亡したものについては抗体価の上昇は認められなかった。一方軽快したものについては感染当初から高い抗体価を保持していることが判明した。 3)未発症者の肝機能正常者、肝機能異常者についても同様の血清抗体価測定を行った。その結果、当初の予想とは逆に、肝機能正常者では抗体価が低く(20〜30%が陽性)、一方、肝機能異常者では未発症にも係らず高い抗体価(57〜85%)を示していた。 4)1〜3の結果を踏まえ、Western-Blot法を用いた抗原蛋白質に関する研究を行った。Vibrio vulnificus菌8株をSDS-PAGE法により分画分類し、その後被検者血清をゲル転写PVDF膜の一次抗体、HRP-IgGを二次抗体としてブロッティングを行った。死亡患者例と軽快患者例ではバンドの出現に差が見られた。 5)動物感染実験 佐賀大学医学部・動物実験委員会の審査による研究許可は平成17年12月末に裁可され、現在実験進行中である。
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