研究概要 |
本研究はVibrio vulnificusの有明海の生態系と病原性の本体を明らかにし、致死的感染症に対する予防法の確立、さらには有効な治療法を確立するための基礎的データを得ることにあり、特に以下の3つの課題についての研究をおこなった。 1.Vibrio vulnificus感染症の国内発生動向と有明海沿岸地域の状況 佐賀大学医学部附属病院における症例に加え文献上の症例を集め、臨床疫学調査を行い、本邦におけるVibrio vulmficus感染症患者の背景、基礎疾患、感染経路予後などを詳細に検討しその動向を明らかにする。 2.Vibrio vulnificusに対する血清抗体価測定システムの開発 Micro IF法によりVibrio vulnificusの標準株に対する抗体価測定システムを開発する。Vibrio vulnificus標準株は血清化学研究所より購入した。 3.Vibrio vulnificus感染症に対する新しい治療戦略-ワクチン治療可能性- 1)佐賀大学医学部倫理委員会の承認を受け、本人・家族からの同意取得のもとに健常人,肝硬変患者、およびVibrio vulnificus感染症患者の血清中の抗体価を測定した。 2)病原性の本体と遺伝子学的特徴を調査した。 3)本感染症に対する実験動物モデルの作成 4)ワクチン効果の判定 本研究の成果は、有明海漁業の振興や地域経済の発展はもとより、沿岸地域住民の健康増進に大きく寄与することが期待される。また、本研究から得られたデータは、有明海の環境アセスメントとしても利用可能であり、有明海再生に向けた数々の施策を行う上での貴重な資料となるものと考える。 さらに、本研究は、同じ問題を抱える韓国、東南アジア、メキシコ湾岸地域に対しても有用な情報を発信することができ、国際的な共同研究に発展する可能性を秘めている。
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