研究概要 |
これまでラットの誤嚥性肺炎モデルに脳損傷の急性期治療に使用される軽度低体温管理の、炎症初期段階の好中球浸潤の程度とICAM-1発現への影響を検討してきたが2002年度は急性肺損傷の発症、増悪にVentilator Inducerd Lung Injuryの要因が大きく取り上げられているため、肺メカニクスを示す気道内圧の測定を追加し低体温の血液ガスと気道内圧の経時的変化を検討した。 雄性SDラットを麻酔下に、気管切開し、人工呼吸器(ventilator model SN-480-7;Shinan, Tokyo, Japan)を用い、純酸素、1回換気量12ml/kgで呼吸回数60-70/分で換気し、炭酸ガス分圧を35-45mmHg.で維持し、最高気道内の測定を行った。 HClを投与した。HClの気管内注入の有無と体温により以下の4群を設定した。(1)常温群(38±0.3℃以下N群)、(2)軽度低体温群(33±0.3℃以下H群)、(3)HCl+常温群(AN群)、(4)HCl+軽度低体温群(AH群)。全群、6時問管理を行い、血液ガスの測定、最高気道内圧の測定をを経時的に追加した。血液ガスでは、AN群はHCl注入後低下状態が持続したが、AH群は注入直後一時的に悪化したものの、6時間目には著明に改善した。最高気道気道内圧はN群H群では上昇は見られなかったがAN群、AH群で著明に上昇した。しかしAH群では血液ガスは気道内圧が上昇したままであったが、PaO2の改善が見られ6時間後にはN群とほぼ同様になった。この結果により軽度低体温で肺メカニクスは改善しないが、血液ガスを著明に改善した。低体温時の血液ガスの改善は肺障害の程度軽減とあわせて肺血流の分布の変化が示唆され、今後の検討を要する。 しかし、今回は肺メカニクスにのみ焦点を当て計画の適切な低体温の維持時問の検討は結果は出ていない。
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