ヒト血管平滑筋において、等尺性張力測定実験をおこない、各種生体内ホルモンおよび循環作動薬の及ぼす影響について検討している。 1.ドパミンは、ヒト胃大網動脈を低濃度で拡張させ高濃度では収縮させる。ヒト内胸動脈では拡張作用が強く、逆に橈骨動脈では収縮作用が強い。このことから、冠動脈グラフト血管におけるドパミンの作用は血管の部位によって異なることが判明した。 2.冠動脈再建術において摘出された、胃大網動脈、内胸動脈および橈骨動脈においてスケルトナイゼーション法によって摘出されたグラフトの血管内皮は、ペディクル法によらて摘出された血管の内皮にに比較し、障害の程度が大きいことが、アセチルコリンによる血管内皮依存性弛緩反応を用いた検討によりあきらかとなった。このことから、スケルトナイゼーション法でグラフトを採取する際には、血管内皮障害によるグラフトスパズムの発生に注意が必要と思われた。 3.ヒト血管平滑筋におけるフォスフォジエステラーゼ阻害薬の作用を検討した結果、アムリノンでは血管弛緩反応がほとんど見られないのに対し、ミルリノンおよびコアッテックで濃度依存性の強い血管弛緩反応が観察された。さらに、ミルリノンとコアッテックにおける弛緩反応も血管の部位が認められ、内胸動脈ではミルリノンが、胃大網動脈ではコアッテックがより強い弛緩反応を呈した。このことから、フォスフォジエステラーゼ阻害薬の血管拡張作用は、血管の部位差が強いことが判明した。
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