研究概要 |
脊髄損傷ラットモデルを作製し,行動学的疼痛行動評価と脊髄後角におけるCyclooxygenase-1およびCyclooxygenase-2(各々COX-1およびCOX-2)の発現性を検討した. 1.脊髄損傷モデル,末梢神経損傷モデル Christensenらによる方法に従い,ラット第11-12脊椎椎弓切除後,第1腰髄神経根入力頭側部に脊髄の半切を行い,脊髄損傷モデルを作製した.末梢神経損傷モデルは,Bennettによるラット-側坐骨神経結紮により作製した. 2.疼痛行動の評価 脊髄損傷5日後より,両側の足底への機械的刺激に対する明らかな痛覚過敏(逃避閾値の低下)が認められ,10日後には,その程度が一定となった.痛覚過敏状態は1ヶ月以上にわたり継続して観察された.末梢神経損傷モデルにおいては,損傷4日後より,損傷側の足底の機械的痛覚過敏が出現し,30日間にわたり持続した. 3.脊髄後角におけるCOX-1,COX-2の発現性の評価 Western blot法により,COX-1およびCOX-2のタンパク発現性を検討した.その結果,脊髄損傷モデルでは,COX-1,COX-2ともに,正常ラットにおける発現は認められないが,脊髄損傷3日後には認められるようになり,5日後では,明らかな発現の増加が認められた.とくに,脊髄半切上部において,COX-2タンパクの発現の増加が著しかった.末梢神経損傷モデルでは,COX-2の発現が,損傷側の脊髄後角および後根神経節にて著しく増加した.COX-1は,顕著な変化を捉えられなかった.
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