研究概要 |
ラット末梢神経損傷モデル(坐骨神経切断)を作成して,そのモデルにおける疼痛行動の評価(足振り行動,熱や機械的刺激に対する痛覚過敏,触刺激に対するアロディニア)を行った後,脊髄後根神経節におけるシクロオキシゲナーゼ-1およびシクロオキシゲナーゼ-2(COX-1およびCOX-2)タンパクの発現性について,Western blot法により解析した.また,疼痛部位におけるプロスタグランジンE_1およびI_2を酵素免疫法(enzyme immunoassay)にて定量し,神経損傷によるこれらのメディエータの疼痛への関与について検討した.加えて,一酸化窒素の定量を高速液体クロマトグラフィー(HPLC)にて定量化し,一酸化窒素合成酵素(NOS)阻害薬であるL-NMMAの潅流による一酸化窒素合成阻害状態により,プロスタグランジンE_1およびI_2産生への影響を検討した. その結果,疼痛出現に伴い,プロスタグランジンE_1およびI_2産生増加,一酸化窒素産生増加,そしてCOX-1およびCOX-2タンパク発現の増加が確認できた.L-NMMAの潅流により,一酸化窒素産生が抑制されるとともに,COX-2タンパクの発現性が抑制された. これらの結果は,末梢神経損傷時に産生される一酸化窒素が,COX-2タンパクの発現性に影響を与え,その結果,プロスタグランジンE_1およびI_2の産生を促進し,疼痛程度をさらに増強させていることを示唆するものであると考えられた.
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