研究課題
基盤研究(C)
血圧・心拍数の監視下で薬物の持続投与が可能な、覚醒状態のSprague-Dawley系ラットをモデルとして用いた。本モデルにP-glycoprotein阻害薬であるキニジンを投与したところ、リドカインによる痙攣に関しては非投与群と有意差がなかったが、ブピバカインについては、より低い血中濃度で痙攣が生じた。また、この際の脳内のブピバカインの濃度はキニジン投与の有無で有意差は無かった。これらの実験結果から、キニジンによってP-glycoproteinが阻害された結果脳組織へのブピバカインの拡散が促進され、より低い血中濃度で痙攣が生じたと考えられた。ただし、局所麻酔薬による痙攣には、脳内のドパミン濃度の上昇が関与しているため、キニジンが中枢神経におけるドパミン濃度に変化を与えた可能性がある。次に、循環系に影響を与える各種の薬物を使用したところ、血圧上昇を生ずるエピネフィリンでは痙攣誘発閾値が低下して痙攣が生じやすくなり、血圧低下を生ずるα受容体遮断薬やカルシウム拮抗薬は痙攣誘発閾値が上昇して痙攣を生じにくくなることが分かった。これらの薬物とP-glycoproteinとの関係については、今後の研究課題である。また従来、脳内の薬物の濃度の定量は殆ど行われておらず、上述の研究などにおいても、脳内の局所麻酔薬の濃度は、動物の脳を取り出してhomogenateを作成し、その中の濃度、即ち全脳の濃度を測定していた。しかし脳内の薬物の濃度は経時的に変化する上、生理学的な状態で測定することによってより臨床に近い条件で実験ができることから、マイクロダイアライシス法で直接脳細胞外液中の局所麻酔薬の濃度を求める研究を開始した。本研究では、エピネフィリンの使用により、脳内の局所麻酔薬が非投与群に比べて高くなることが明らかになり、今後研究を継続予定である。
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