<等尺性張力変化測定> 1)ペントバルビタール麻酔下に、ラットの胸部大動脈を摘出してリング標本を作成し、95%O_2、5%CO_2で飽和した37℃ Krebs Ringer液中に至適張力を負荷して懸垂し、その等尺性張力変化を測定した。 2)フェニレフリンで前収縮させた各血管標本において、ACh惹起弛暖反応におよぼすセボフルランの抑制作用を再確認した。 3)2)において確認されたセボフルランの抑制作用について、NO合成酵素の基質であるL-アルギニンで前処置した血管標本を用い、ACh惹起血管弛緩反応およびセボフルランの弛縵反応抑制作用の有無を確認した。これらにより、両者におけるL-アルギニンの影響があることを確認し、セボフルランのL-アルギニンとの競合によるNO合成酵素阻害作用を再確認できた。さらに、後処置によりL-アルギニンがセボフルランの阻害作用を回復させることも確認した。 4)次に、フェニレフリンで前収縮させた各血管標本において、ACh惹起弛縵反応におよぼすNO合成酵素に対する競合的阻害薬であるLω-nitro-L-arginine (L-NANE)の抑制作用を検討し、さらにNO合成酵素の基質であるL-アルギニンのL-NAMEの抑制作用ににおよぼす回復効果を確認した。これと3)を比較することにより、NO合成酵素競合性阻害薬とセボフルランの阻害作用機序は共通する部分があるとわかった。 5)次に、2)について、ラット血管内皮細胞内のCYP450-2E1特異的誘導物質であるエタノールおよびピラゾールにより誘導し、血管標本における、ACh惹起血管弛緩反応およびセボフルランの弛暖反応抑制作用の有無を確認した。セボフルラン弛緩反応抑制作用はCYP450-2E1特異的誘導により減弱しセボフルラン弛緩反応抑制作用でのCYP450-2E1の関与が示唆された。 6)また、CYP450-2E1特異的基質であるクロルゾキサゾンで前処置した血管標本を用い、ACh惹起血管弛緩反応を検討した。また、CYP450-2E1誘導ラットにおいても同様に検討し、これと2)を比較することにより、CYP450-2E1特異的基質とセボフルランの阻害作用の差異が明らかとした。 クロルゾキサゾンの前処置でも5)と同様の結果が得られ、セボフルランとCYP450-2E1酵素の反応がセボフルラン弛緩反応抑制作用の機序であることを示唆した。
|