これまで敗血症患者あるいはそのモデルの心筋保護により、心機能維持と死亡率を改善する治療法は確立されていなかった。そこで、臨床上の敗血症像に類似したラットCecal Ligation & Perforation(CLP)モデルを用い、早期よりnicorandilを投与した群と生食を投与したコントロール群を比較し、心機能を改善できるか、摘出心筋標本であるWorking Heart modelで検討した。さらに、nicorandilが、血中サイトカイン濃度、心筋細胞アポトーシス、死亡率に与える影響について検討した。 結果として、nicorandilの持続投与は、敗血症心筋の心機能を有意に高く維持し、CLP48時間後の死亡率を有意に減少させた。また、TNF-α、NOxの血中濃度を減少させた。IL1-β、macrophage migration inhibitory factor(MIF)の血中濃度には有意な差は見られなかった。一方、心筋細胞のアポトーシス数には、有意な差を生じなかった。 本研究により、nicorandilの持続投与は、ラット敗血症心筋の心機能を維持し、さらに生存率を改善することが示された。これには、nicorandilのサイトカイン放出抑制が関与する可能性が示唆された。nicorandilは、すでに臨床で使用されている薬剤であり、その安全性も確立している。敗血症に際しnicorandilの投与を行うことで、敗血症に対する新たな臨床的治療効果が期待される。
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