研究の背景:糖尿病患者では高率に神経障害を合併するが、周術期においては自律神経機能障害が問題となる。この障害によって、無痛性の心筋虚血や、低酸素症に対する呼吸反応の低下が健常者より高率におきる可能性がある。 研究目的:本研究では、術前の自律神経機能と、術中および術後48時間の心筋虚血、不整脈の有無と経時的な動脈血酸素飽和度(SpO2)を調査し、それらの関連について検討する。さらに術中、後の血糖、疼痛管理、麻酔方法、使用薬剤を自律神経系の機能とその回復に関連して追求する。 研究内容:術前の自律神経機(心電図R-R間隔変動、バルサルバ試験、Head-up tilt試験、強制呼気および吸気R-R比観察)と、術中および術後48時間の心筋虚血、不整脈の有無と経時的な動脈血酸素飽和度(SpO2)を調査し、心筋虚血中とその前後の心拍変動のスペクトル解析によって、自律神経機能障害の結果生じる交感神経系の亢進(心拍変動スペクトル解析上のLF/HF値の上昇)を観察する。これにより周術期における自律神経系の回復過程および体液変化過程において、心筋虚血、不整脈の誘発、SpO2の低下と自律神経系機能との相関を明らかにする一助となり、交感神経系、副交感神経系における障害とにおける関連を詳細に検索することができる。糖尿病患者に多い突然死との因果関係を模索できる可能性がある。 平成14年度は開腹手術もしくはそれに準じた侵襲度の手術を予定した、糖尿病患者、非糖尿病患者(若年者、高齢者)について数例ずつ自律神経機能と、術中および術後48時間の心筋虚血、不整脈の有無と経時的な動脈血酸素飽和度(SpO2)を調査し、解析を行った。平成15年度はさらに症例数を増やし、検討を加える予定である。
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