Sprague-Dawley系ラットを用いて、ペントバルビタール麻酔下に心臓を摘出し、潅流心モデルを作成した。摘出心はworking heart潅流として2時間観察した。炎症性サイトカイン(TNF-α 1ng/ml、IL-1β 1 ng/ml)投与した群としなかった群に分け、それぞれ経時的循環変動測定とともに、潅流2時間後の左室心筋を採取し、一酸化窒素(NO)産生系の指標として一酸化窒素合成酵素(NOS)のmRNA発現を、一酸化炭素(CO)産生系の指標としてhemeoxygenase(HO)のmRNA発現をGAPDH発現に対する比として半定量測定を行った。またiNOS阻害薬L-canavanine (L-CAN)あるいはHO阻害薬zinc protoporphyline(ZPP)を潅流液中に同時に投与し、循環変動およびmRNA発現の変動を測定した。炎症性サイトカインは左室心筋における構成型NOS(cNOS)および構成型HO(HO-2)のmRNA発現に影響をおよぼさなかったが、誘導型NOS(iNOS)および誘導型HO(HO-1)のmRNA発現を有意に増加させた。一方、L-CANによるiNOS抑制はHO-1発現を抑制し、ZPPによるHO抑制はiNOS発現を増加させる可能性が示唆された。L-CANおよびZPP投与は炎症性サイトカインによる左室収縮力抑制を改善するが、過剰産生されたNOおよびCOが心筋抑制に関与すると考えれば、遺伝子レベルのNO産生系とCO産生系の相互作用との間に解離が認められた。
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