(基礎研究)ラットworking heartモデルを用いて、炎症性サイトカイン(TNF-α、IL-1β)による心筋抑制におけるガス状メディエータ(一酸化窒素、NO;一酸化炭素、CO)の役割と相互作用を検討した。サイトカインにより心仕事量(LVW)および冠血管流量は経時的に減少したが、NO合成酵素(NOS)抑制阻害薬L-canavanine(CAN)およびCO産生酵素hemeoxygenase(HO)抑制阻害酵素zinc protoporphyrine(ZPP)により改善を認めた。心筋細胞内発生の誘導型NOS(iNOS)および誘導型HO(HO-1)は潅流2時間後に有意に発現の増加を認め、CAN投与によりHO-1の抑制を、ZPP投与によりiNOSのさらなる増加とHO-1抑制を認めた。遺伝子発現レベルでは、NO産生系とCO産生系での相互作用を認めるものの、心筋抑制や冠血管拡張作用にはさらに別の因子の関与が示唆された。 (臨床研究)冠動脈再建術(CABG)患者118人において、血中Carboxy hemoglobin(CO-Hb)が外科侵襲を反映する指標となるかを検討した。CABGにより血中TNF-α、IL-1β、HO-1のmRNA発現レベルは有意に増加したが、人工心肺装置を使用しない場合やglucocorticoidを投与した場合は有意に増加の抑制効果を認めた。血中CO-Hb濃度は各炎症性メディエータと有意な相関を認めたが、術前のCO-Hbが1%以上と高い症例では、相関性が低い傾向を示した。CO-Hbは術前の炎症反応やCO代謝が正常な場合には、外科侵襲を反映する指標となると考えられた。
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