哺乳動物を低酸素状態にさらすとhypoxia-inducible factor-1α mRNA(HIF-1α)が誘導される。HIF mRNAがコードしているHIFタンパク質は転写因子であり、これによってVEGF、PDGFなどのSignal Pathwayが活性化され、血管修復、血管新生が促進される。これらの機構は組織における低酸素状態への一種の適応と考えられている。本研究では出血性ショックおよびエンドトキシンショックにおけるシグナル伝達の様式を解明することを目的としている。 まず虚血性モデルとして、ラット頚静脈から脱血し、出血性ショックモデルを作成した。ショック発生後3時間の時点で心臓および肝臓を摘出しHIF-1αの推移をRT-PCR法を用いて半定量して比較したところ、1時間後よりHIF-1α mRNAの発現の上昇が観察された。この上昇はショック発生後3時間までその上昇が確認された。統計学的な有意差は個体数を重ねて改めて検討する予定である。 次に、敗血症性ショックモデルとしてLipopolysaccharide(LPS)を腹腔内注入して作成したエンドトキシンショックを作成し、経時的に心臓および肝臓を同様に取り出してHIF-1α mRNAの発現を検討したところ、LPS注入後6時間後において上昇が観察された。このHIF-1α mRNAの発現の上昇に対する吸入麻酔薬の前処置の影響や、同遺伝子の発現様式の細かい時間経過については今後検討していく予定である。
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