GABA受容体作用物質であるベンゾジアゼピンのひとつであるミダゾラムの頚動脈小体に対する薬理学特性を調べた。具体的には高酸素状態および低酸素状態に暴露されたNew Zealand White Rabbitの頚動脈小体の活動電位に対するミダゾラムの影響を調べた。実験系は既に確立されているin vitro系で、総頚動脈と一塊にして取り出した頚動脈小体をmodified Tyrode's solutionで灌流するものである。 灌流液の酸素分圧とミダゾラム濃度を変えることにより、頚動脈小体の生理学的、薬理学的特性を二つの異なるパラメーターによって調べることが可能である。 本研究によりミダゾラムが頚動脈小体の機能に影響を与えることが示唆された。すなわち、ミダゾラムが頚動脈小体の低酸素換気応答を抑制する可能性と、高酸素状態における基礎的活動電位を抑制する可能性である。今までに得られた知見の注目すべき点は、ベンゾジアゼピンが末梢性受容体を介して呼吸抑制作用を持つ可能性を示したことである。特に低酸素換気応答を末梢性受容体レベルで抑制する可能性を示したことは新しい知見と言える。 ミダゾラムの作用は用量依存的に強くなったが、果たしてこれがGABA受容体による対するものなのか、あるいは異なる機序によるものなのかは今後の検討課題である。また、ミダゾラムが頚動脈小体と頚動脈洞神経との神経伝達に影響を及ぼしたのか、頚動脈小体の酸素感知機構に直接影響を及ぼしたのかも今後に検討すべき課題である。 以上を解明していくことで頚動脈小体の酸素感知機構を知る手がかりを得ることが出来る。
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