研究概要 |
除草剤パラコート(paraquat dichloride,1,1'-dimethyl-4,4'-bipyridinium dichloride)は、その強い毒性のために重篤な肺線維症を引き起こし、Parkinson病の危険因子の一つとして重要視され始めている。その急性細胞毒性発現機構と細胞内解毒機構について、過去の学説を覆し、薪たな学説を提案する。 パラコートは、肺、腎、副腎、中枢神経などのミトコンドリアMADH-quinone-oxidoreductase(NQO)活性によってラジカルになり、活性酸素を生成してミトコンドリアを破壊し、組織を傷害することを発見した。これにはミトコンドリア外膜の分子量約500kDaの膜蛋白質複合体が関与し、NADH依存性にパラコートを1電子還元した。複合体成分には膜透過ポアに関与する電位依存性アニオンチャンネル(VDAC)が含まれており、活性酸素生成の本態であることが明らかになった。プラスミド導入によってVDAC蛋白質を高発現させた細胞のミトコンドリアでは、パラコートによる活性酸素生成が増大し、抗VDAC抗体によって抑制された。 一方パラコートの毒性発現機構として、ミクロソームのphase I薬物代謝酵素系のNADPH-チトクロムP450リダクターゼーチトクロムP450系が世界的に長く信じられてきたが、本研究によって、パラコートの水酸化解毒機構でることが明らかになった。
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