移植腎の長期生着のためには、急性拒絶反応の発症を早期に診断し、徹底した早期治療を施す事により、拒絶反応の遷延化を防止することが重要である。 最近、NO産生酵素の一つであるinducible nitric oxide synthase (iNOS)が、実験的同種心、肺、膵及び腎移植の急性拒絶反応時に大量に誘発されている事実が明らかにされ、移植組織内でのNO産生の亢進(Nitrotyrosine)が組織障害の誘因の一つと考えられている。 我々はこれまでに、ラット腎移植後急性拒絶反応モデルを用いて、組織浸潤したマクロファージによりiNOSの発現が亢進し、大量に産生されたNOにより、Banff分類のGrade3に担当する重篤な組織障害が誘発される一方、iNOS阻害剤(アミノグアニジン)の投与により組織障害の軽減が得られる事を明らかにしてきた。 さらに、Nitrotyrosineの発現に関与しているラジカルスカベンジャーであるmanganese superoxide dismutase (MnSOD)の体内動態に関しても検討を加え、急性拒絶反応時に著しいMnSOD活性の低下が認められ、不活化されたチロシンニトロ化MnSODの増加をきたし、尿細管障害に至る事実を明らかにした。
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