進行性前立腺癌患者に対する治療は、内因性アンドロゲンを除去する内分泌療法が主体であり、80%の患者が治療に反応するが2-3年の内に再燃する。このようにアンドロゲンに反応せず再燃を起こしホルモン抵抗性癌となる機序についてアンドロゲンレセプターとサイトカイン、神経伝達物質、ステロイドホルモンを中心に基礎的検討を行ってきた。また、再燃癌のステロイドホルモンによる治療、臨床経過についても検討した。 1)デキサメサゾン(DX)は内分泌療法後の再燃前立腺癌患者の治療に有効である。再燃前立腺癌患者に対してDX投与患者の中に前立腺特異抗原(PSA)値の減少をみた。さらにPSA値の減少をみた患者のなかにインターロイキン6(IL-6)の減少を伴っていた。この結果より、IL-6値の減少はDX療法によるアンドロゲンレセプターのアンドロゲン非依存による活性化を抑制する機序の1つであることを報告した。 2)脊椎転移による脊髄は前立腺癌の重大な合併症である。麻痺のある骨転移患者の生存期間はのない骨転移患者と同様の成績が得られており、積極的な治療が必要と考えられた。しかしホルモン抵抗性の患者においては脊髄に対する治療は無効な例が多いことを報告した。 3)前立腺癌の再燃の機序として、アンドロゲンレセプターの遺伝子、非リガンドによる活性化などの知見をまとめた。 4)NSEは神経内分泌腫瘍のマーカーの1つである。前立腺癌患者において治療前血清NSE値は、内分泌療法を受けた転移性前立腺癌患者の予後を予見することが可能であることを報告した。 5)血清中のp53抗体はさまざまな癌で検出されている。前立腺癌と肥大症患者における血清p53抗体値の臨床的意義を前立腺特異抗原(PSA)と比較検討した結果、T1c前立腺癌と前立腺肥大症の鑑別に有用であることを報告した。 以上について全て原著論文として発表済みである。
|