マウス不死化ライデッヒ細胞株とセルトリ細胞株を用いた精細胞の分化機構の解明と応用

2003 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 14571490
• 研究機関: 富山医科薬科大学
• 研究代表者: 布施 秀樹 富山医科薬科大学, 医学部, 教授 (40143292)
• 研究分担者: 明石 拓也 富山医科薬科大学, 附属病院, 助手 (70345560)
• キーワード: ライデッヒ細胞 / セルトリ細胞 / 精細胞 / 不死化

研究概要

1)セルトリ細胞の分化誘導時に変化する遺伝子群の解析:昨年度はライデッヒ細胞を39℃で培養すると細胞増殖が抑制され,17β-HSDtype1mRNA量の増加と17β-HSDtype3mRNA量の減少および形態変化が観察された.本年度はセルトリ細胞を39℃で培養すると細胞周期のS期の減少とG2/M期の増加を伴う細胞増殖停止が観察された。IntelliGeneマイクロアレイを用いて解析した結果、細胞増殖停止時に2倍以上変化する遺伝子が1,080個中29個(増加:20,減少:9)明らかになった。生体組織は様々な機能を持つ細胞の集合体として生体の重要な機能を担っている。細胞、分子レベルで精巣機能の詳細な解析を行うという観点に立ち、両細胞を用い精子細胞支持細胞系を構築し、精子細胞を分化させる条件を見出すことが重要と思われた。
2)内分泌撹乱物質の一つであるビスフェノールA(BPA)のセルトリ細胞およびライデッヒ細胞に与える影響:BPAを各細胞に添加し、細胞の生存率をトリパンブルー色素排除試験で計測した。また、遺伝子の発現の評価は定量的RT-PCR法(TaqMan assay)で行った。セルトリ細胞においてBPA(200μM)は細胞死を誘導し、また、マイクロアレイを用いた解析より、BPAによって増加または減少する遺伝子が数多くあることを明らかにした。セルトリ細胞と同様にライディッヒ細胞においてBPA(50-200μM)は濃度依存的に細胞死を誘導した。ライディッヒ細胞はestrogen受容体を発現するがestrogen受容体拮抗薬ICI182,780はBPAによる細胞死を抑制しなかった。ライデイッヒ細胞においてBPAの作用はestrogen受容体を介する作用ではないことが示された。BPAのライディッヒ細胞に対する作用がセルトリ細胞と同じかどうかは判っていない。

研究成果

• [文献書誌] Ohta, S., Fuse, H.et al.: "DNA microarray analysis of genes involved in the process a differentiation in mouse Leydig cell line TTE-1"Archives of Andrology. 48. 203-208 (2002)
• [文献書誌] 古谷雄三, 太田昌一郎, 布施秀樹: "術前凍結保存精子で挙児を得た両側精巣腫瘍の経験"産婦人科の実際. 51. 2119-2121 (2002)
• [文献書誌] Ohta, S., Fuse, H.et al.: "Evaluation or tissue factor antigen level in human seminal plasma"Urological Research. 30. 317-320 (2002)
• [文献書誌] Ohta, S., Tabuchi Y.et al.: "Establishment of Leydig cell line, TTE1 from transgenic mice harboring temperaturer-sensitive simian virus 40 large T-antigen gene"Archives of Andrology. 48. 43-51 (2002)
• [文献書誌] Tabuchi, Y., Ohta, S., Fuse, H.et al.: "Development of the conditionally immortalized testicular Sertoli cell line TTE3 expressing Sertoli cell specific genes from mice transgenic for temperature sensitive simian virus 40 large T-antigen gene"Journal of Urology. 167. 1538-1545 (2002)
• [文献書誌] 岩崎雅志, 明石拓也, 布施秀樹: "精索静脈瘤患者の治療成績-高度乏精子症症例について-"日本不妊学会雑誌. 48. 87-92 (2003)