研究概要 |
ホルモン不応性のLNCaPの樹立を目指してマトリゲルを用いてLNCaP細胞をSCIDマウス皮下へ移植した。マウスの精巣を摘除後、増殖を来した移植腫瘍を摘出し、再びcastrated miceに移植、これを3回繰り返した。ここで腫瘍を形成したものをLNCaP-Lec4とし、この腫瘍組織より細胞株を樹立した。いっぽうLNCaPを低アンドロゲン環境下に継代したものをLNCaP-SFとした。LNCaP-Lec4、およびLNCaP-SFは親株であるLNCaPに比べ、castrated miceにおいて明らかに増殖速度は速く、アンドロゲン非依存性の獲得が示された。またLNCaP-SFをマウス骨(tibia)に注入したところ、約5ヵ月でosteoblastic changeを主体した骨腫瘍を形成した。組織学的には骨梁形成が著明でありosteoblastの活性化が示唆された。以上の結果から、in vitro, in vivoにおける低アンドロゲン環境が、ホルモン抵抗性の獲得、ならびに骨組織での造骨性変化を伴う増殖に関わることが示唆された。これらのモデルは、ヒト前立腺癌におけるホルモン不応性の獲得ならびにホルモン不応性前立腺癌の造骨性骨転移巣形成の分子機構を研究するうえで有用であると思われる。また破骨細胞の活性を抑制するbisphosphonateは癌の骨転移による骨痛を抑制する作用が知られているが、同時に癌細胞にアポトーシスを誘導し直接的に腫瘍増殖抑制効果をもたらすことが、ホルモン抵抗性ヒト前立腺癌においてin vitro, in vivoで示された。そこで今後はbisphosphonateのホルモン抵抗性ヒト前立腺癌骨転移の予防および初期治療効果について研究を進める予定である。
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