研究概要 |
当教室において樹立したホルモン耐性前立腺癌細胞株(LNCap-N)に対してのDNAマイクロアレイ解析した結果、insulin like growth factor-binding protein II (IGFBP-2)がホルモン感受性の親株(LNCap)と比較して、LNCap-Nで強く発現していた。そこで我々はこのIGFBP-2および、MDR1、androgen receptor, estrogen receptor (alpha and beta), progesterone receptorについてのリアルタイム定量的RT-PCR用のプライマーを各1組ずつ作製した。さらに、Hybridization probe法用の1組のプローベをそれぞれ作製し、癌細胞株を用いて、条件設定を行った。 臨床検体でのIGFBP-2 mRNAの測定を実施した。良性前立腺肥大症39例と無治療前立腺癌69例の比較では、前立腺肥大症で発現量が多く、統計学的に有意差を認めた(P<0.0001)。一方、前立腺癌では分化度別では発現量に統計学的な差を認めなかったが、高分化癌ほど発現量が多かった。癌の進行度では、統計学的な有意差は認めなかった。一方、治療前に骨転移を有する前立腺癌4例において、原発巣と腸骨骨髄での発現量を比較したが、転移のなかった3例では発現量は極めて低かった。発現量の多寡による非再燃率・癌特異的生存率に有意差は認めなかったが、高発現群で再燃率が低い傾向にあった。ホルモン療法実施21例では、未実施例よりも発現量が有意に高かった(P=0.0158)。 さらに、前立腺癌でのthymidylate synthaseとdihydropyrimidine dehydrogenaseのmRNA発現量を検討したが、臨床病理学的因子との間に相関は認めなかった。
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