研究概要 |
現在までのin vitroのデータとしては、各前立腺癌細胞株での、Racの活性の測定(Rac activation assay)を行い、細胞株により、活性に有意に差があることを確認した。特に、アンドロジェン非依存性細胞株(PC3,DU145)は、依存性細胞株(LNcap)と比較して、Racの活性が有意に高く、細胞の増殖、浸潤、転移機序に関与している可能性が示唆される。チロシンカイネースレセプターを介する、増殖ホルモンを投与する事により、投与時間依存性にRacの活性が上昇し、1時間後に最大に達する事を確認した。また、PC3,DU145細胞株において、dominant negative Racをトランジェントにトランスフェクションし細胞内に誘導する事によりRacの活性を低下させたところ、有意に走化性(migration assay)が低下する事を確認している。これらの事より、Racは、前立腺癌細胞において、走化性の面からは重要な役割を担っている事が示唆される。しかし、adeno virusのシステム、Tat-proteinのシステム、テトラサイクリンsystemを使った、細胞内により効率よく目的のrecombiinant蛋白を誘導するシステムの安定した構築にはいたっておらず、現在続行中である。これらの結果をふまえての発展性としては、前立腺癌細胞の走化性、浸潤能、細胞増殖を内因性の蛋白の活性の面から評価するのみで無く、外的刺激因子との相互作用の面から検討を進める事が必要と考えている。VEGFからチロシンカイネースレセプターを経由する刺激経路ならびに、細胞外マトリックスからインテグリンを経由する刺激経路の、単独もしくは、相互作用の中でのRho GTPaseの役割の評価を進める予定である。
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