研究概要 |
膀胱癌及び精巣癌におけるシスプラチン耐性能獲得の機序を解明するためシスプラチン刺激により制御される遺伝子の探索とその抗癌剤耐性への関わりを解析した。膀胱癌細胞株T24、KK47よりシスプラチン耐性株T24/CD10及びKK47/CB60シスプラチン耐性株を樹立し、精巣腫瘍細胞株NEC8よりシスプラチン耐性株NEC8/DDPを樹立した。各系統の耐性株、親株間にてマイクロアレイを施行した。ノーザンブロットおよびウェスタンブロットにより発現に差のある遺伝子のシスプラチン刺激下での発現パターンを確認した。最終的に膀胱癌においてはT24、KK47における親株と耐性株間で共通して発現に差がある6個の遺伝子を同定し、シスプラチン刺激で発現に変化のある3つの遺伝子を同定した。そのなかでInositol 1,4,5-triphosphate(IP_3)receptor type1(IP3R1)は親株においてシスプラチンにより早期に発現が抑制された。S1OOP遺伝子と未知の遺伝子C8は親株に強く発現しており、親株においてはシスプラチン刺激により発現が増強するが、耐性株においては低発現を示した.精巣腫瘍においてもカルシウムシグナルに関与するであろうと考えられる遺伝子に親株、耐性株間に発現の差を認めた。IP3R1は小胞体膜上に位置し細胞質内のCa濃度を調節する因子であり、最近ではアポトーシスを誘導する因子と考えられてきている。今回の解析では、膀胱癌のシスプラチン耐性獲得のメカニズムはIP3R1発現抑制によるアポトーシス誘導の破綻による悪性転化が主な機構であることが考えられた。他の遺伝子に関しても現在抗体を用いて解析中である。これらの遺伝子の解析は診断、治療法選択のマーカーへの利用や新たな治療標的として有用であると示唆された。
|