ステロイド受容体転写共役活性化因子はステロイドホルモン受容体を介した、標的遺伝子に対する転写活性の橋渡しに必要である。前立腺癌のホルモン依存性、非依存性増殖にこれらの分子の発現は不可欠と思われる。我々は今回の研究で、ステロイド受容体転写共役活性化因子がアンドロゲン受容体を介した転写調節にどのよ。うに作用しているかを明らかにした。 ステロイド受容体転写共役活性化因子SRC(SRC-1、2、3)の前立腺癌組織内での発現を検討した。in situ hybridization、免疫組織染色にて、ヒト前立腺癌の約46%にSRC-3の過剰発現が認められた。また、SRC-3の発現は前立腺癌の進行度(Stage)、悪性度(Gleason score)、再発、ホルモン耐性に相関していた。次に、前立腺癌細胞株LNCaPにSRC-3遺伝子を導入し、SRC-3の永久発現細胞を確立した。これらのSRC-3永久発現細胞はすべて高い細胞増殖能を示した。また、アンドロゲン(テストステロン)除去した培地内でも、コントロール細胞より高い細胞増殖能を示した。また、前立腺癌細胞株LNCaPを用いた実験で、SRC-3の発現がAKT/mTORシグナル経路を介したアポトーシスの調節に関与していることが証明された。In vivo実験として、SRC-3を前立腺内で特異的に発現するトランスジェニックマウスを作成した。前立腺内で特異的に発現させるために、PSAプロモーターを用いた。20週までの段階では、前立腺内に明らかな変化は認められていない。 以上の結果から、ステロイド受容体転写共役活性化因子は前立腺癌の発生、増殖、内分泌療法抵抗性に影響を与える重要な因子であり、その発現レベルは新たなバイオマーカーになる可能性があると思われた。
|