研究概要 |
【目的】オステオポンチン(OPN)はカルシウム含有結石のマトリックス成分のひとつであり,尿路結石形成に重要な役割を担っている。また,イヌ遠位尿細管細胞(MDCK細胞)でOPNのリガンドであるインテグリンαV β3が発現していることも知られている。しかし,OPNの発現機序ならびに結石形成への関与の詳細についてはいまだ解明されていない。今回,MDCK細胞にOPNおよびビトロネクチン(VN)刺激を加えた後,OPN発現を経時的に調べるとともにFocal adhesion kinase(FAK)のリン酸化の程度を免疫沈降反応とリン酸化アッセイを用いて検討した。 【方法】1ng/ml〜1μg/mlの濃度のOPN蛋白またはVN蛋白をcoatingした98穴プレートでMDCK細胞10^7/mlを4時間培養し,MTTアッセイにより接着細胞数を調べた。また,Dish上のMDCK細胞に1ng/m1-1μg/m1の濃度のOPN蛋白またはVN蛋白を加え4,8,16時間後のOPN蛋白発現をWestern blottingを用いて調べた。さらに抽出した蛋白に抗FAK抗体で免疫沈降反応を行い、抗リン酸化抗体でFAKのリン酸化を検討した。 【結果】coatingしたOPN蛋白,VN蛋白の濃度に比例して接着したMDCK細胞数は増加した。同時にOPN蛋白の発現量も刺激した蛋白の濃度依存的に増加した。このときMDCK細胞ではFAKのリン酸化が経時的に進んでいることが確認された。 【結論】結石形成を考えるうえで,マトリックス蛋白の腎尿細管細胞での発現機序を解明することは重要なことである。今回は,いったん結石原基ができると不可逆的に結石形成が促進される原因についてOPN蛋白のフィードバック機構による自己分泌を推察して実験を行った。その結果,MDCK細胞でのOPN蛋白にはFAKのリン酸化を介した自己分泌機構が関与している可能性が示唆された。
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