研究概要 |
われわれは腎細胞癌の90%に発現している癌関連抗原MN/CA9の遺伝子発現にプロモーター領域の低メチル化が重要であることを明らかにしてきた腎細胞癌におけるMN/CA9遺伝子発現に、低酸素応答を介した系とVHLの異常を介した系の存在が考えられる。 今回の研究では、腎細胞癌培養細胞を用いて、低酸素状態およびVHL蛋白異常とMN/CA9発現の関係について調べることにより、MN/CA9発現の機序を明らかにすることを目的とした。6種類の腎細胞癌培養株(SK-RC1,7,10,12,14,44)およびコントロールとしてMN/CA9陰性/VHL正常のGlioblastoma細胞株(U87MG)を用いてpVHL異常とMN/CA9発現の関係について検討した。6種類の腎癌細胞株すべてVHL gene alterationがあったが、MN/CA9発現はSK-RC1,10,44の3種類であった。そこでSK-RC1に注目しwild type VHL geneを遺伝子導入するとこれまでの報告どおりMN/CA9はdown regulationした。また、このtransfectant (SK-RC1/VHL)やU87MG (VHL normal)をhypoxia下に培養するとMN/CA9を再び誘導したが、親株(SK-RC1)はhypoxiaにても変化がなかった。一方、VHL異常があるにも関わらずMN/CA9発現のないSK-RC14にwtVHLを導入してもhypoxia状態にしてもMN/CA9の発現は認められなかった。これらから、MN/CA9陰性のcell lineでは、VHLの異常にかかわらず、VHL-HIF1 pathwayはmain pathwayでなく他のpathwayが存在することが示唆された。
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