研究概要 |
ブタ排尿筋、膀胱三角部筋、尿道平滑筋におけるβ-アドレナリン受容体サブタイプの検討:ブタ排尿筋、膀胱三角部筋、尿道平滑筋を用い、[3H]-dihidmaloprenolを用いた放射線リガンド結合実験と各β-アドレナリン受容体サブタイプ選択的拮抗薬を用いたcompetition binding studyにより、β-アドレナリン受容体サブタイプの分布を検討した.その結果、全ての下部尿路平滑筋において、β3-アドレナリン受容体サブタイプが優位に存在し、β2:β3-受容体の比は、約1:3であることが分かった.またKC1で前収縮させた筋切片にIsoproterenol(β-アドレナリン刺激薬)、Salbutamol(β2-アドレナリン刺激薬),BRL 37344(β3-アドレナリン刺激薬)10nM-100μMを段階的に投与し、濃度-弛緩曲線を作成した。また各濃度-弛緩曲線に対し、CGP 20712A(β1-アドレナリン拮抗薬)、ICI 118551(β2-アドレナリン拮抗薬),SR59230A(β3-アドレナリン拮抗薬)を3段階の濃度で投与し、各拮抗薬の親和性を検討した。その結果、ブタ排尿筋における弛緩反応においては、β2-およびβ3-アドレナリン受容体サブタイプがともに関与していることを発見した。 膀胱三角部筋においては、IsoproterenolおよびBRL 37344の弛緩反応は、β2-およびβ3-アドレナリン受容体サブタイプがともに関与しているが、Salbutamolの弛緩反応ではβ2-アドレナリン受容体サブタイプのみの反応しか見られなかった。尿道平滑筋の弛緩においても同様に、β2-およびβ3-アドレナリン受容体サブタイプがともに関与し、Salbutamolの弛緩反応ではβ2-アドレナリン受容体サブタイプのみの反応しか見られないことが分かった。したがって、ブタ下部尿路平滑筋は、全体としてβ2-およびβ3-アドレナリン受容体サブタイプがともに関与しているが、膀胱体部の弛緩反応ではβ3-アドレナリン受容体サブタイプが優位に、膀胱三角部や尿道平滑筋ではβ2-アドレナリン受容体サブタイプが優位に関与していると考えられた。 ヒト排尿筋、膀胱粘膜におけるRho/Rhokinaseの発現の検討:膀胱癌に対し、膀胱全摘術を行った症例(8例)において、膀胱粘膜、膀胱癌組織、膀胱筋層を別々に採取し、Rho/Rhokinaseの発現をWestern blotting法および免疫組織染色法にて検討した。その結果、Rho/Rhokinaseは膀胱癌組織、正常膀胱粘膜上皮組織では全例に発現がみられたが、筋層ではほとんど発現をみないか、ごく弱い発現しか認めなかった。 今後の研究課題としては、排尿筋の収縮に、Rho/Rhokinseが関係しているか、またRho/Rhokinaseが膀胱の粘膜上皮に多く存在するならは、膀胱粘膜の存在の有無において排尿筋収縮に違いが見られるかなどを検討していく予定である。
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