腎細胞癌患者の摘出腎の癌組織と正常腎組織を用いて、Rho、Rac、Cdc42遺伝子のmRNAとタンパク質の発現を、各々RT-PCR法とWestern blottingにて定性化・定量化した。Rho、Rac、Cdc42遺伝子のmRNAとタンパク質は、癌と正常組織にて発現を認めていた。更にRhoサブタイプにおいては、RhoA、RhoB、RhoCは発現パターンに差を呈していた。RhoAは癌と正常組織にて発現に差を認めなかった。RhoBは、発現量が増すほど生存期間が延びる傾向を呈していたが、対照的にRhoCでは、mRNAとタンパク質の発現量は癌の異型度と進達度と正の相関関係を認めており、また生存期間とは負の相関関係を認めた。このように腎細胞癌においては、Rhoサブタイプはそれぞれが別の機能をになっている可能性があり、これらの成果を国際誌に投稿中である。同様にRacとCdc42の発現パターンと臨床病理所見との相関を検討したところ、異型度・ステージが高い程、これらの発現量が多かった。現在、Rho、Rac、Cdc42の相関を調べており、またこれらRho family低分子量G蛋白質の発現を調節していると考えられているp120cateninの発現についても検討中である。 また、腎細胞癌との対比の意味で、他臓器癌でのRho family低分子量G蛋白質の役割も検討しているが、腎孟尿管癌においても、RhoAのmRNAとタンパク質の発現量は癌の異型度と進達度と正の相関関係を認めており、また生存期間とは負の相関関係を認めており、この成果をBJU International誌に発表した。 同様に、膀胱癌において検討したところ、RhoおよびそのエフェクターであるROCKの蛋白質の発現をWestern blotting法と免疫組織染色法にて検討したところ、RhoA、RhoCおよびROCKは膀胱癌の進展と正の相関を呈していたのに対し、RhoBは負の相関を示したことを、Clinical Cancer Research誌に発表した。 更に、精巣腫瘍とRhoとの関連では、RhoA、ROCK、Rac1、Cdc42の蛋白質の発現をWestern blotting法と免疫組織染色法にて検討したところ、これらは精巣腫瘍の進展と正の相関を呈しており、Clinical Cancer Research誌に受理された。
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