研究概要 |
移植後腎生検の病理組織学的所見と生検組織中のT細胞およびサイトカインの関連を検討するため、以下の解析を行った。 北里大学病院で1981年から2002年の間に腎移植を受けた患者を対象とした。移植腎生検試料51例のBanffによる病理診断は次の通りである。急性拒絶反応(AR)3例、慢性移植腎症(CAN)8例、免疫抑制剤腎毒症(Ntox)6例、(AR+CAN)共存1例、(AR+Ntox)共存2例、(CAN+Ntox)共存8例、(AR+CAN+Ntox)共存1例、非拒絶(NR)6例。また陰性対照として1hour生検(1h)16例を使用した。生検試料から抽出したRNAからRT-PCR法により、CD4,CD8,IFN-γ,IL-4,IL-10各mRNA量を半定量した。 ARなど3例以下のものを除く病理所見間で統計学的比較を行った結果、CD4産生については(CAN)≒(CAN+Ntox)>(Ntox)≒(NR)≒(1h)の関係が観察され、またCD8産生については(CAN)≒(CAN+Ntox)≒(Ntox)>(NR)≧(1h)の傾向が見られた。サイトカインのうちTh1サイトカインであるIFN-γでは(CAN)≒(CAN+Ntox)≧(Ntox)>(1h)の関係が観察された。一方Th2サイトカインであるIL-4は(AR+CAN+Ntox)、(CAN)、(CAN+Ntox)に1例ずつ、またIL-10は(CAN)にのみ2例検出された。 これらの結果より、多くのCANには、CD4陽性T細胞およびIFN-γによるTh1型応答が関与し、また一部のCANにはIL-4,IL-10によるTh2型応答が関与することが示唆された。一方Ntoxではこれら免疫学的要素の関与は低いことが示唆された。
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