Humanized SCIDマウスに同種ヒト腸間膜細動脈を移植し、短期間の免疫抑制によりこれを生着させた後、徐々にこれを解除することで細動脈内での慢性拒絶モデルを作成した。このモデルを用いて同種移植の慢性拒絶反応における血管病変の成立機序を解明することが本研究の目的である。ヒト末梢血リンパ球を移植したSCIDマウス(hu-PBL-SCID)はその血流中にヒト免疫グロブリン、ヒトTリンパ球の存在を認めたことより、humanized(ヒト化)SCIDマウスを確立し、マウス内でヒト免疫環境を再現する事に成功した。 提供者より充分なインフォームド・コンセントを得た同種ヒト腸間膜細動脈をヒト化SCIDマウスの大動脈にマイクロ・サージリーにより移植し、その血流の維持を直視下に確認した。短期間の免疫抑制によりこれを生着させ、徐々にこれを解除することで細動脈内での慢性拒絶モデルの作成した。それに浸潤するヒトT細胞の存在がモノクローナル抗体を用いた免疫組織検査にて認められた。これらGIL(graft-infiltrating lymphocytes)をin vitroに戻すことによりcell lineの作成を試みたが、免疫抑制療法の維持と解除のタイミングおよび至適レジメを決定することが非常に困難を極めこれらの細胞だけを選択し培養細胞として樹立することは不可能であった。 また、血管内皮細胞へのヒトリンパ球の吸着像が免疫組織法にて認められ、これら細胞は主に、ヒトCD3&CD4陽性細胞であった。慢性拒絶反応における血管病変については特に種々のサイトカイン及び局所における蛋白産生が関与していることが示唆されているため、摘出した細動脈試料を用いたPCRによりTNF-α、IFN-γ、等の局所でのサイトカインmessengerの発現は認められたが、特異的な細胞遊走等に関わると考えられ因子については特定できなかった。
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