研究概要 |
◆卵巣癌におけるCOX-2の発現を検討した。卵巣癌と卵巣チョコレート嚢胞との合併は、全体で5例(8.8%)に認められ、その内訳は、類内膜腺癌2例(22.2%)、明細胞腺癌2例(13.3%)、漿液性腺癌1例(4%)、であった。腺細胞におけるCOX-2の発現は対照群(正常卵巣顆粒膜細胞)で最も低値であった。卵巣チョコレート嚢胞群でCOX-2は対照群に比し有意に強い値を示した(P<0.01)。卵巣癌群では、類内膜腺癌群で最も強い染色性を示し、評価ノモグラムは平均3.9と最も高い値を示した。次に明細胞癌(3.4)、ついで漿液性腺癌の順となった。以上より、卵巣チョコレート嚢胞の癌化には、過剰に発現したCOX-2が深く関与している可能性がある。 ◆フリーラジカル関連酵素のSODについては、子宮体癌および正常子宮内膜組織にて、発現を比較検討した。子宮体癌根治術を受けた子宮体癌51症例のパラフィン包埋標本を用いた。対照群は2相性の月経周期をもち、妊孕能のある正常婦人の子宮内膜23例で、そのうち増殖期が8例、分泌期が15例である。SODの発現はモノクロ抗体を用い、子宮内膜組織について免疫組織化学的に検討した。評価はH-scoreによる定量法で行った。成績:正常子宮内膜におけるSODのH-scoreは増殖期:0.34±0.24、分泌期:0.32±0.17であった。一方、子宮体癌腺上皮におけるSODのH-scoreは0.96±0.50で、対照群に比し有意に強い値を示した(p<0.001)。明細胞癌におけるSODの発現は、他の類内膜腺癌に比べて有意に(p<0.05)高く、また、5年生存率は有意に(p<0.0001)低かった。結果:子宮体癌組織、特に明細胞癌ではCu/Zn-SODの強い発現がみられた。本酵素が体癌患者の予後に深く関わっている可能性が示唆された。 ◆eNOSの発現の臨床的意義について検討した。子宮体癌30例および正常子宮を有する23例から組織を採取した。eNOSの発現はマウス抗ヒトNOSモノクローナル抗体を用い、間接法で染色した。発現はH score定量化した。(1)子宮体癌、増殖期内膜、分泌期内膜におけるH scoreは、それぞれ1.38±0.42(Mean±SD),0.30±0.31,0.35±0.11であり、子宮体癌組織は増殖期および分泌期内膜に比し、有意に強い発現を示した(p<0.001,ANOVA)。(2)子宮体癌における平均値(1.38)より高い、高値群(n=11)と低い、低値群(n=19)の2群に分けて予後を検討した結果、観察期間中における死亡例(3例)は全て高値群に属した。
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