我々は、子宮頸癌の発生要因とされるヒトパピローマウイルス(HPV)のE6癌蛋白と細胞蛋白であるE6APによりウビキチンを介して分解を受けるターゲットとして、新規癌抑制蛋白human scribble(hScrib)を同定した。本研究過程において、我々はまずhScribの癌抑制蛋白としての機能を解析するべく、その結合蛋白の同定を試みた。子宮頸癌を発生させるハイリスクHPV E6蛋白のC末端のアミノ酸配列はT/S-X-L/Vというモチーフで保存されていることより、それらと同様のアミノ酸配列をもつ蛋白を、hScribの結合蛋白の候補として検索した。このhScribの結合蛋白の候補として、ハイリスクHPV E6蛋白のC末端と同様の配列をもつものとして、我々はヒトの癌抑制蛋白であるAPC(adenomatous polyposis coli)が候補となりうることを発見した。In vitro及びin vivoでhScribとAPCとの結合能を検討したところ、こられの蛋白はin vitro及びin vivoで実際に結合することが分かった。この結合に必要な配列をそれぞれの蛋白で調べたところ、hScribのPDZ domain及びAPCのC末端の配列が結合に必須であることが分かった。我々は、hScribの抗体を作製し、その細胞内局在を調べたところ、hScribはMDCK細胞においてAPCとcolocalizeすることを示した。現在、hScribとAPCの結合を阻害することにより、細胞の極性の変化等の異常がもたらされるかを検討中である。また、Scribbleはマウスにおいてノックアウトマウスを作製したところ、神経管欠損が生じ、その原因遺伝子であることが分かった。人においても、hScribが神経管欠損の発症に関わる可能性があり、現在検討中である。
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