研究概要 |
(1)遺伝子組み替えアデノウイルスはまずpcDNA3のPcmvの下流にPTEN cDNAをサブクローニングし、発現カセットをpShuttleベクターを経由してpAdenoXベクターにサブクローニングした。HEK293パッケージング細胞に形質転換し、遺伝子組み替えアデノウイルスDNAを導入し、遺伝子組み替えウイルス粒子を作成した。このウイルスを、PTEN-nullの子宮内膜癌細胞イシカワ株に感染させ、遺伝子導入した。導入細胞ではウイルス濃度依存性にPTEN発現の増強が見られたが、高濃度ではアポトーシスに陥る傾向が強かった。(2)遺伝子導入細胞を用いて、増殖因子感受性の変化を検討した。増殖因子のうちEGF,IGF-IではPTEN発現細胞で明らかな感受性の増強が見られ、50-100ng/mlの濃度で細胞増殖を180%増強した。これらの細胞では、PTEN遺伝子導入によって一旦燐酸化Aktのダウンレギュレーションが観察されたが、EGFの培地添加によって燐酸化Aktの増加が観察され、PIP3/Aktのシグナル伝達系がEGFによって活性化された結果と考えられた。(3)PTEN遺伝子導入によるエストロゲン受容体の変化をウエスタンブロットで検討した。PTEN遺伝子導入によってERbetaのアップレギュレーションが観察されたが、燐酸化ERbetaの発現量には変化がなかった。一方ERalphaはPTEN導入によって総量の変化はないものの、燐酸化ERalphaは減少し、PTENがエストロゲン受容体の機能や発現量に影響を与えていることが明らかとなった。(4)エストロゲン代謝酵素のうち、Aromatase, Estrone sulfatase, 17beta hydroxysteroid dehydrogenase type1,type2,estrone sulfotransferaseの発現変化をreal-time-PCRで解析したところestrone sulfatase,17beta-hydroxysteroid dehydeogenase type1の発現量の増加が見られ、PTENは細胞内でE1の合成に関与していることが示唆された。
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