研究概要 |
最近肥満あるいは2型糖尿病の発症に関する機序が分子レベルで解明されつつあり,現在までに既に40種以上の肥満関連遺伝子が報告されている.さらに,脂肪細胞は以前は単に中性脂肪の貯蔵所と考えられていたが,現在では高血圧の危険因子であるアンジオテンシノーゲンやレプチン,tumor necrotic factor-α(TNF-α)や血栓形成の危険因子であるplasminogen activator inhibitor-1(PAI-1)などのホルモン/サイトカインを分泌する生体内で最大容量の内分泌器官として機能することも知られている. 妊娠時のインスリン抵抗性に関する機序については現在のところ未だグレーゾーンである。そこで妊娠時のインスリン抵抗性に関与する脂肪細胞由来の因子を同定することが本研究の目的である。 初年度はまず既知因子であるレジスチン、アデイポネクチンについて検討を行った。その結果、アデイポネクチンなるインスリン抵抗性に対する一種の防御因子のよう作用する因子の遺伝子発現や血中のタンパクレベルの減少が妊娠末期に生じることを発見し、これが妊娠末期のインスリン抵抗性の生じる一つの原因である可能性を示し、現在論文を投稿中である。一方レジスチンは妊娠時に変化は認められず、その直接的関与は否定された。 さらにマイクロアレイを用いて妊娠末期の脂肪組織で特異的に変化している遺伝子の検討も行っている。
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