研究概要 |
HER2ペプチドをヒトに応用するにあたり、臨床試験用のペプチドをオーストラリアのLICRから入手(HER2ペプチドのSafetyとQualityに関する検定に合格、FDAにて承認済み)、HER2ペプチドによるワクチン療法プロトコールを作製し、三重大学倫理委員会に臨床試験申請書を提出し、十分な審議を行った後、試験の開始許可を得た。そのさいのpatient eligibilityは、1)癌告知がされており、HER2陽性の癌患者であること、2)HLA-A2402保有者であること、3)手術・化学療法・放射線療法などの標準的な癌治療に抵抗性であること、4)臨床試験について詳細に説明し、十分なinformed consentが得られていることとした。eligibility criteriaを満たす患者に対し、ペプチドの用量増加試験を用いて、有害事象を観察する安全性評価を行った。HER2陽性卵巣癌・乳癌・肺癌患者計10名が登録されたが,癌ワクチン臨床試験において,有害事象は認められなかった。遅延性過敏反応(DTH)は1例で試験中に観察され、また1例では終了後継続投与中にDTHが陽性化した。また,HER2ペプチドを注射することにより、癌患者体内で癌に対する免疫反応がほぼ全例において誘導できることがわかった。さらに、ワクチン免疫は6回以上繰り返して注射し、またGM-CSFを併用すると、免疫反応が強化されることも分かった。臨床的にはいずれの例も腫瘍縮小効果は観察でなかったが、HER2ペプチドを用いた癌ワクチンは有害事象を認めず安全でした。 ペプチド単独で、CTLの誘導や臨床効果を得ることは容易ではなかった。そこで我々は、進行・再発したHER2陽性卵巣癌・乳癌・肺癌患者に対し、CHP-HER2を投与する臨床試験を開始した。臨床試験を始めるにあたって、CHP-HER2によるワクチン療法プロトコールを作製し、三重大学倫理委員会に臨床試験申請書を提出。十分な審議を行った後、試験の開始許可を得た。そのさいのpatient eligibilityは、HER2p63-71の場合と同じとした。CHP-HER2によるワクチン療法を開始し、この治療の安全性と効果に関しての検討を行っています。現在、解析の途中ですが、ワクチン施行患者において、抗組換えHER2蛋白抗体の抗体価上昇、および細胞性免疫応答の上昇(HER2特異的CD8+とCD4+T細胞が共に上昇する)を認めました。
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