研究概要 |
滋賀医科大学産婦人科における基礎的研究をもとに開発された2段階胚移植法は、その実施について当大学倫理委員会において承認された。そして平成14年度までに当科では44症例に対して2段階胚移植法(以下、2段階法とする)をおこない、従来おこなわれてきた1段階胚移植法(以下、従来法とする)の成績と比較検討した。患者背景、患者年齢分布,排卵誘発法,平均採卵数,受精率、卵割率、平均移植胚数、卵巣過剰刺激症候群(OHSS)の発生率については両者間で有意差を認めなかったが、臨床妊娠率は2段階法では63.5%であったのに対し、従来法では33.3%であり、有意に妊娠率の向上が認められた。しかし、多胎妊娠率も2段階法では33.3%(品胎妊娠率9%)と、従来法の20%に比べて上昇傾向がみられた。このため、これまでの2段階法のプロトコールではDAY2に2個、DAY5に1個の胚移植をおこなってきたが、今後はDAY2に1個、DAY5に1個の胚移植をおこなうプロトコールに変更するべきと考えられた。共同研究を行っている埼玉医科大学総合医療センターともども現在検討中である。また、この2段階法は全国各地の生殖医療機関において追試されつつあり、やはり同様な妊娠率の向上が報告されつつある。今後も各医療機関の臨床成責を持ち寄り、研究発表をおこない、プログラムの計画などに関する修正などをおこなう。2段階法については著書として発表した。また、胚由来低分子因子の検索と同定についても積極的に研究を進めており、ヒトではIVF-ETプログラムにおける胚培養後の培養液を集め、LC-Mass spectrometryをおこない、現在解析が進行中である。さらに得られたデータと胚発育との関係を解析することによって、良好胚の選別法を開発する予定である。さらに、同様の実験をマウスの系でも進めている。これまでの成果の一部は投稿準備中である。
|