1999年より滋賀医科大学産婦人科における基礎的研究をもとに施行されてきた2段階胚移植法は、埼玉医科大学総合医療センターや英ウィメンズクリニックなどの共同研究施設を加えると600周期を超えた。そして以下のように検討を行った。ただし、患者背景、年齢分布、排卵誘発法、平均採卵数、卵巣過剰刺激症候群の発生率などは各比較群で有意差を認めなかった。1)2段階胚移植法と従来法、および胚盤胞移植との妊娠成績比較 2)胚が2個または3個しか得られない周期に対する2段階胚移植法の有用性の検討 3)2段階胚移植における移植胚のグレード別の妊娠率・多胎率の検討 これらの研究から以下の結論が導き出された。1)2段階胚移植法における妊娠率が、従来法、胚盤胞移植に比べて最も高かった。また、反復不成功例における2段階胚移植と胚盤胞移植間の成績比較においても有意に2段階胚移植法の方が妊娠率が高かった。2)胚が2個または3個しか得られない周期に対しても、2段階胚移植法は従来法に対して高い妊娠率が得られた。3)day2に良好胚を2個移植した周期は高い妊娠率を得ることができるが多胎率も高かった。2段階胚移植法においてday2に良好胚が3個以上得られた場合は移植胚数を制限し多胎予防に努める必要があることが判明した。妊娠率を落とさずに多胎率を大幅に下げる方法としてday2に良好胚が3個以上得られた場合はday2に1個、day5に1個の合計2個の胚移植とする方法が有効であることが確認された。LC-Mass spectrometryを用いた胚由来因子の同定実験では、ヒト胚盤胞からFLRGが分泌されていることが初めて判明した。この分泌蛋白はヒト子宮内膜においても発現、分泌されていることが我々の研究で判明し、マウスを使った実験ではこの分泌蛋白が過剰に発現されると不妊症になることが判明した。現在、体外受精胚移植法を複数回行っても妊娠しない難治性不妊症についてこの因子との関係を調べている。
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