研究概要 |
ES細胞は胎盤になる栄養外胚葉に分化し、転写因子であるCdx2,Hand1の発現が誘導される。また、Cdx2の下流にあると考えられる転写因子Id-1が、絨毛細胞(trophoblast)のstem cellとしての維持に関与していることが示唆される。そこで我々は、絨毛癌細胞の未分化状態と分化状態でのId-1の上流域を含むreporter遺伝子を用い、転写制御機構を検討したところ、Id-1遺伝子プロモーター上の-267bpから-146bpに未分化状態における転写活性部位を認めた。転写因子Sp1がその部位に結合し、また分化に伴いその結合が減少した。これを、第12階胎盤学会学術集会で、ワークショップとして報告しまた論文投稿準備中である。 また、低酸素状態で誘導されるhypoxia inducible factor(HIF)-αが絨毛細胞の分化誘導に関与することが指摘されている(J.Clin.Invest.105:577-587,2000)。低酸素が絨毛細胞の分化機構に及ぼす影響を検討し、分化誘導因子のマーカーとしてGLUT(glucose transporter) 1について絨毛癌細胞で検討したところ、HIF-αによってGLUT1が誘導されることを見いだし、(J Endocrinol 183 145-154 2004)に発表した。さらに、我々は絨毛癌細胞において、低酸素負荷でのHIF-1αの誘導は、低分子量蛋白G-proteinのRhoAの発現増加および活性化を介すること示し、(J.Clin.Endocrinol.Metab.in press)に発表した。これが、妊娠中の絨毛細胞におけるHIF-1αの発現増加の新たなメカニズムとなる可能性が示唆された。
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