研究概要 |
新しい核内受容体Pregnane X Receptor(PXR)は,リガンドとして複数のステロイドホルモンや薬剤などのxenobioticsが知られxenobiotics受容体の一つと考えられる.この受容体の制御遺伝子としてcytochrome P450に属し様々な薬剤や内因性ステロイドホルモンの代謝酵素(CYP3A)が報告されており,PXRを介した新たなステロイドやxenobioticsの代謝調節機構の存在が示唆されている.今年度はこの新しいステロイド・Xenobiotics代謝調節機構PXR-CYP3A系が内分泌攪乱物質暴露時に生殖生理において如何に活性化されるか,特にホルモン標的臓器である子宮内膜や子宮体癌におけるPXRやCYP3A4の発現とその役割について検討した. 正常子宮内膜ではPXRの発現を検出できなかったが,子宮出血のためホルモン剤内服症例の子宮内膜では,PXR発現を認めた.また子宮体癌症例でのPXRの発現は,labeling indexにて0-100%まで様々であった.またPXRはCYP3A4と正の相関を示し,ERとは負の相関を示した.HEC-1細胞ではER, PR低発現,PXR強発現であったが,Ishikawa細胞ではER, PR高発現,PXR低発現であった.リガンドであるEやEDCを投与するとHEC-1細胞ではIshikawa細胞に比しPXRを介した転写及びCYP3A4発現が強く誘導された. 以上よりPXRは,そのtarget geneであるCYP3Aの発現制御を介して子宮体癌組織内でのステロイド・xenobiotics代謝に影響を及ぼすと考えられ,女性ホルモンやEDCのER低発現子宮体癌への作用機序の一つとして重要な役割を果たしている可能性が示唆された.
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