研究概要 |
ICRマウスにStreptozotocinを投与して,糖尿病を作成し,妊娠させ糖尿病の胎児奇形に及ぼす影響につき検討した.次いで期間形成期のday7.5にグルコースを皮下注射し一過性に高血糖状態にした場合の影響につき検討した.その結果,現在までに以下の結果を得た. 1.糖尿病合併妊娠および一過性高血糖状態においても胎児奇形は有意に増加した. 2.情報伝達系であるDiacylglycerol(DAG)-Rrotein Kinase C(PKC)系の異常についてみると,糖尿病群においてday9.5の胎仔,胎盤のPKC活性,DAG量が増加した.また,一過性の高血糖においても同様の結果がえられ,高血糖による胎児奇形発生にPKC-DAG cascadeの異常が関与していることが判明した. ついで,PKC-DAG cascadeに関係し,インスリン抵抗性,脂質代謝とも密接に関連しているperoxidase proliferator activated receptor γ(PPAR γ),およびvascular endothelial growth factor(VEGF)について検討したところ,糖尿病合併妊娠においてday9.5のPPAR γ,VEGF発現の亢進が認められ,妊娠初期からの脂質代謝,血管新生異常なども奇形発生に関与している可能性が示唆された. さらに,母体環境も胎児に間接的影響を与えるため,とくに糖尿病合併妊娠での母体血液レオロロジーにつき検討し.胎児に及ぼす影響について検討した.その結果,糖尿病合併妊娠においては,母体の血液流動性が障害され,胎児発育に影響を及ぼしていることが示唆された.
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