研究概要 |
わが国において糖尿病は急速に増加し,過去5年間で糖尿病は50万人,予備軍は200万人増加している.この傾向は妊婦においても同様である.糖尿病合併妊娠の合併症である胎児奇形は過去50年間減少していない.この理由としては,見逃されていた糖尿病が多い,計画妊娠がなされていないことなどがある.この糖尿病合併妊娠における胎児奇形の発生機序については不明の点が多く,今回この機序を明らかにすることを目的とした. ICRマウスにストレプトゾトシン(STZ)投与し糖尿病を作成検討した.STZ糖尿病モデルでは胎仔奇形が増加した.最近の糖尿病研究において最も注目されている異常の1つにDiacylglycerol (DAG)-Rrotein Kinase C(PKC) cascadeの異常があるが,糖尿病合併妊娠の胎仔,胎盤においてもPKC活性の増加,DAG量の増加が認められた.器官形成器の妊娠7.5日の一過性の高血糖負荷においてさえ,妊娠9.5日胎仔に同様の傾向を認めた.これらの結果はDAG-PKC cascadeが胎仔奇形発生に密接に関与していることを示している. インスリン抵抗性,脂質代謝と密接に関連しているperoxidase proliferator activated receptor γ (PPAR γ)も期間形成期(妊娠9.5日)の糖尿病合併妊娠の胎仔,胎盤で異常を来していることを見いだした. また,母体環境も胎児に間接的影響を与えるため,とくに糖尿病合併妊娠での母体血液レオロロジーにつき検討したところ,糖尿病合併妊娠では血圧上昇,蛋白尿増加といった妊娠中毒症症状を呈し,血液流動障害もおこり,胎仔発育に影響を及ぼしていることが判明した.
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