研究概要 |
子宮収縮および陣痛周期を制御する機構として、従来から非選択性陽イオンチャンネル(non selective cation channel、NSCC)とATP受容体電流を妊娠ラット子宮平滑筋細胞において観察しその性質を報告してきた。今年度においては両者の性質を比較検討し、切迫早産治療薬として臨床応用されているβ刺激剤とマグネゾールの作用を検討した。 得られたNSCC電流は共に電位依存性のない矩形電流であり、ランタンおよびガドリニウムに高い感受性を示した。(以下NSCC_<La>電流)NSCC_<La>電流の大きさは細胞外ナトリウム(Na)濃度に依存しており、各種陽イオンの透過性はNSCCではK(カリウム)>Cs(セシウム)>Na>Li(リチウム)の順であった。一方、細胞外ATPで誘発されるATP受容体も各種陽イオンに感受性を示すがその順序はK>Cs>Li>Naであった。ATP受容体電流は他のプリン体およびその誘導体でも促進され、阻害剤(suramin, PPADS)に感受性を示すことより子宮においてはP2X受容体が主体と考えられた。 細胞外にマグネシウム(Mg,0.01-10mM)を投与するとNSCCとATP受容体電流は共に濃度依存性に阻害されることより、Mgの子宮収縮抑制機序の一つと考えられた。しかしながらβ刺激剤であるイソプロテレノールおよび塩酸リトドリン(ウテメリン)1μMの投与では抑制効果は認めず、Mgの濃度-抑制曲線にも影響しなかった。 以上よりNSCC_<La>とATP受容体電流はマグネゾールの子宮収縮抑制機序のひとつであることが示唆されたが、これらの系にはβ刺激剤は効果がないことが明らかとなった。マグネゾールとβ刺激剤は異なる作用機転があると推察された。
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